理事長所信

意見書

【はじめに】
『天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず』
人は皆、生まれながらに平等であると説いた、郷土の偉人、福沢諭吉翁は自身の著書「学問のすすめ」にて書き記したあまりに有名な言葉。
この言葉はこう続きます。
『されども今、広くこの人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて、その有様雲と泥との相違あるに似たるはなんぞや。その次第はなはだ明らかなり。「実語教」に、「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」とあり。されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりてできるものなり。』
つまりは、社会における人の差異は常に学ぶ者かそうでない者であり、学び続ける努力を怠らないことがいかに重要であるかということを教えてくれています。
1953年に創立された中津青年会議所は「明るい豊かな社会の実現」という崇高な理念を掲げ、時の社会課題解決のために常に学び、行動に移すことで、この中津の発展に寄与し、所属する青年たちに成長と発展の機会を提供し、人生における「最後の学び舎」としてあり続けてきました。まさに福沢諭吉翁の教えを体現している組織であると言えます。
青年会議所の最大の特徴は、「学びを続けなければならない環境」に身をおけることです。1年間という限られた活動期間の中で与えられた役割、設定した目標達成のために良い意味で「やるしかない」という状況が最大の成長に繋がるのです。
40歳までという年齢制限があるこの組織では、メンバー各々が在籍できる期間は様々です。しかし、「不連続の連続」と呼ばれる青年会議所の 1年間は、後戻りできないかけがえのない「一生に一度の機会」であるのです。だからこそ余すことなく、後悔することなく、全力を注ぐことが必要であると考えます。
2026年の中津青年会議所が行う全ての運動がこの地域の発展と会員一人ひとりの成長となる千載一遇の機会とするべく果敢に挑戦して参りましょう。

【地域を、九州を席巻する九州コンファレンス】
今から遡ること 23 年前、中津青年会議所は九州コンファレンスの前身である九州地区大会を主管し、九州地区内に大きな輝きと存在感を放ちました。創立50周年を目前に迎え、会員数は100名近くに迫っていたこの時代は 72年間の歴史の中で最も勢いのある「最盛」の時代であったと言えます。
また、当時の中津市では大手自動車メーカーの工場誘致の決定が目前に迫り、FIFA ワールドカップの試合が大分で行われるなど明るい話題に溢れていました。現在の中津青年会議所に目を向けると、日本青年会議所全体の会員数と同じように、会員数は半分近くまで減少の一途をたどり、中津市においても大きな衰退こそしていませんが、明るい話題や発展の兆しがあるとは言えない状況だと考えます。
私たちは 2023年に中津での九州コンファレンス主管立候補を決議し、2024年、主管選考会にて 2026年の主管青年会議所として選出されました。24年ぶり中津での開催、12年ぶり大分県での開催となる大会となります。
現在の中津青年会議所は 2002年当時と比べ、会員数は半分程になっており、かつてほどの勢いは失われたように思うかもしれません。
しかし、この中津を想う気持ち、「明るい豊かな社会の実現」という創始の念までが半減しては決してないのです。むしろその熱量は時を経るごとに高まっているからこそ九州コンファレンス主管獲得に至ったのであり、私たちはこの大会を主管するに相応しい LOMであると誇るべきなのです。
では、この大会を主管するというまたとない機会をどのように活かすべきでしょうか。
それはひとえに、九州コンファレンスを「青年会議所だけの大会に留めてはならない」ということであると考えます。
九州コンファレンスは九州地区内の多くのメンバーに参加をしてもらわなければ成り立たない大会ではあります。中津に足を運んでくれるメンバーの方々がこの地域の魅力を十分に感じてもらえるように設えることは極めて重要です。
それと両輪で多くの市民に喜ばれ、歓迎される大会でなくてはなりません。なぜならばこの地域と多くの市民にも発展と成長の機会を提供することが、中津青年会議所の使命であるからです。
九州地区協議会の運動を最も発信できる場である九州コンファレンスは参加者に中津の魅力を伝えることも必要ですが、中津市民に対しても九州各地の魅力を届けることが必要です。
地域益、社会益、主催者益、主管益、参加者益、いわゆる大会主管がもたらす 5益と言われるものがあります。この中でも地域益、参加者益を特に重要視することができれば、九州各地の青年会議所メンバー、中津市民、または他地域から足を運んでくれる方々が十分にこの大会を楽しむことができると考えます。
多くの方々にとって魅力的な大会を構築し、この中津青年会議所と中津市が輝きを放てる機会として参りましょう。

【新たなる同志の拡大 会員拡大活動こそが青年会議所活動の根源である】
青年会議所は世襲経営者のサロンクラブのような集まりだ。
このように揶揄されることを何度も耳にした経験があります。私自身、2015年にこの組織の一員に加えて頂き、十余年になります。その経験からはっきりと申し上げますが、青年会議所はそのような団体では断じてありません。所属する会員の多くがこの地域、幅広い世代の市民のことを真摯に考え、行動してきたこの実績は72年の歴史が証明してくれています。
また、所属するメンバーの多くは自ら進んで入会してくるわけではありません。知人、友人、あるいは青年会議所関係者から誘われるなどの会員拡大活動を受け、入会するケースが殆どであり、会員拡大活動こそが青年会議所活動の根源であると言えます。
近年、全国的に青年会議所の会員数は減少の一途を辿り、喫緊の課題として取りざたされています。しかし、ひとえに人数が少ないことが良くないということではありません。限られた人数であっても知識と工夫があれば、地域に根差した活動を行うことができるからです。極めて重要なことは「なぜ人数が多いほうが良いのか。」この理由を明確にすることであると考えます。
中津青年会議所が行う活動は、この中津市の発展に資するものであり、組織の人数が増えるということはこの地域を想う人材の増加を意味します。また、人数増加はスケールメリットをもたらし、より地域にインパクトを与える運動を展開していくことも可能になります。だからこそ青年会議所は多くの同志を必要とするのです。
組織の存続のため、目標達成のためだけに会員拡大活動を行うのでは、中津青年会議所の良さは相手には伝わることはありません。そればかりか、むしろこの組織の評価を落としかねません。
「中津のためにあなたの力が必要なのです」という思いに共感してもらい、地域に資する活動の中に青年としての成長があること理解してもらうことが何よりも重要なのです。
本質を捉えた会員拡大活動を展開することが組織の基盤強化となる唯一の道であると信じています。

【地域を想い行動を興せる「自走型」の人材の創出】
私たちが暮らす中津市も、他の地方都市と同様に、人口減少や高齢化、若者の流出といった多くの課題を抱えています。これらの問題に対し、行政だけでの力で解決するには限界があります。
いま、求められているのは、地域の課題を「誰かの責任」ではなく、「自分たちの課題」として捉え、自ら考え、行動できる自走型の人材を中津で増加させることにあると考えます。
私自身、この組織に所属する以前は地域との関わりは持たないどころか、持とうともせず、ただ見ているだけの傍観者でありました。しかし、青年会議所に入会したことで、地域との接点が生まれ、まちづくり・青少年育成などに携わることで、次第にこの地域を真剣に考え始め、この活動に参画することに誇りさえ覚えるようになりました。
人は、自分が関わったものにこそ愛着を持つものです。地域に関わる機会があるからこそ、この地域の課題を「自分ごと」として感じられるようになり、やがて地域への誇りや責任感、つまり郷土愛が育まれていきます。それは決して特別なことではなく、地域の行事に参加することや、地元の人と対話することなど、日常の中の些細な接点から自然と生まれてくるものです。
私たちは、地域や社会に対して「無関心」でいることはできても、「無関係」でいることはできません。私たちの生活、仕事、家族、すべてがこの地域社会のあり方と密接につながっています。人は誰一人として一人で生きているわけではありません。そして、「自分さえ良ければいい」という社会が訪れることは決してありません。だからこそ、自分の住む地域をより良くしようとする行動は、巡り巡って、自分自身の人生を豊かにすることに繋がるのです。
地域の課題を「自分ごと」として捉え、解決に向けて行動できる自走型の人材は、地域にとって何よりの財産です。行政や民間の団体が地域のために 100 の歩みを進めるよりも、一人でも多くの市民が地域のためにと一歩を踏み出すことの方がより尊いのです。誰かに委ねるのではなく、自分たちの手で創っていく。その意識を一人でも多くの人が持ち始めたとき、この中津は確実に好転すると確信します。

【地域と世界の未来をつなぐ国際交流】
青年会議所が国際交流に取り組む理由は、文化交流や親睦ではありません。異なる言語、歴史、価値観を持つ者同士が出会い、信頼関係を築くことその経験の中でこそ、大きな視野と人間力が育まれるからです。国際の機会とは青年会議所メンバーに与えられた特権だと考えます。中津青年会議所は、1973年より大韓民国・晋州青年会議所との姉妹交流を結び、今年で52年目を迎えました。
我が国日本と大韓民国が辿ってきた歴史は平坦なものではありません。しかし、この交流は、国家間の問題に左右されず、時代とともに進化を重ねてきた、民間外交の理想形であり、信頼と友情の歴史そのものです。
私たちがこの国際交流においてなすべきことは 2 つあると考えます。1つ目は、この 52年にわたる晋州青年会議所との交流を、次の世代へと確実に継承していくことです。この半世紀を超える歩みは、先輩諸兄姉が互いを尊重し、ときに困難を乗り越えながら、積み重ねてこられた財産です。今を生きる私たちがそのバトンを受け取り、これからの時代を担う若い世代へと引き継いでいくことが、私たちの責任であり、使命であります。
2つ目は、この国際交流で得た経験や知見を、地域社会にしっかりと還元していくことです。現在、中津市には 2,000名を超える外国人が暮らしており、国際的な文化の多様性は、もはや特別なものではなく、私たちの日常そのものとなりつつあります。つまり、国際交流は一部の人たちだけが関わる非日常の出来事ではなく、地域社会における重要なテーマとして、誰もが関わるべき現実の課題なのです。晋州青年会議所との交流を地域のために転換する発想と実行に移すことが、私たちには必要であると考えます。
52年にわたる晋州青年会議所との交流の歴史を、これからの地域に活かしていかなければなりません。青年会議所にしかできない民間外交の成果であるこの国際交流の経験を、次世代へと受け継ぎながら、地域社会の未来に寄与できる国際の機会を創出しましょう。

【価値を再構築する例会の実施と運営】
月に一度の例会ではメンバーが一堂に会し JCI Creed、JCI Mission、JCI Vision、JC宣言文に綱領唱和を行います。それは、私たちが「何のために JC 運動を行っているのか」を認識し、志を同じくする仲間とともに理念を共有する根幹的な場です。組織の持続的な成長のためには、メンバー一人ひとりが「この組織への帰属意識」を持つことが何より重要です。その根源こそが例会であると考えます。
しかし現在は、入会間もないメンバーが増加する中で、例会の本質的な価値や重みが十分に共有されていると言えません。月に一度、全メンバーが集うこの貴重な機会を、単なる定例会にとどめるのではなく、理念を深め、仲間との一体感を育む場として再構築する必要があります。そして、メンバーの自発的な参加を促す姿勢も重要性を増しています。「無理に行く必要はない」と思うメンバーに「月に一度の機会を逃してはならない」という意識に変換していくことが求められると考えます。
例会という好機を、青年会議所の理念を実感できる重要な場とし、この機会を最大限に活かすことで、組織としての力強い一体感を生み出しましょう。

【地道な歩みを、確かな共感へ変換する広報活動】
昨今は SNS などの発展により、多くの人々が情報を発信することが容易になり誰もが社会に対して影響力を持つ可能性がある時代となりました。私たちもこの時代の潮流に乗り遅れることなく、SNSを利用し外部へ向けて発信を行ってきました。

しかしながら、私たちはまちづくりや青少年育成といった実行面には強くても、広報においては十分な成果を上げられていません。そこには、現代の主流となっている SNS 型の広報との相性の難しさがあると感じています。私たちの活動は、いわゆる「映え」や派手なビジュアルでは伝わりづらく、じっくりと積み重ねる地道なものであることが多いからです。しかし、この主流と呼ばれるものに迎合すべきではなく、伝え方を工夫し、共感を生む広報にさせていく必要があると考えます。
広報とは情報発信ではなく、地域との接点でもあります。いかに高い志で運動を行っていても、それが伝わらなければ、大きなインパクトは生まれません。「わかりやすさ」「熱量」「人間味」のある広報を重視し、私たちの活動を効果的に発信し、より一層の地域からの信頼を積み重ねて参りましょう。

【結びに】
私は両親や親族に青年会議所の関係者はいないうえ、旧下毛郡地区の小規模事業者です。しかし、青年会議所は、どのような家庭に生まれ、どのような肩書を持っているかに関係なく、ひたむきに行動する者に平等にチャンスが与えられる組織です。だからこそ、私のような人間にも、理事長という職責に挑戦する機会に巡り合えたと確信しています。
ただ、理事長という職責はやはり特別なものです。これまで、この中津青年会議所の理事長を務められた先輩方は、優れた人格者であり、まちの未来を見据えながら運動を牽引してこられました。その姿を目の当たりにしながら、私は自らの出自や立場を鑑み、立候補に至るまでに何度も葛藤を抱きました。私は、理事長の候補者としては異質な存在であることを、自らが一番よく理解しています。
それでも私がこの責任を引き受けようと決意したのは、今日、この組織に在籍する誰よりもこの中津青年会議所に育ててもらったという恩義と感謝の思いがあるからです。私はこの会の一員として加えて頂き、多くを学びと出会い、社会に対する考え方も、自分自身の人生も大きく変わりました。だからこそ、最前線に立ってこの組織に恩返しをすることこそが、あと数年在籍できる私に与えられた最後の使命であると思い至りました。
不安や葛藤は、誰にでもあるはずです。それでも挑戦する決意を固めたのは、1年間という限られた時間だからこそ、本気で向き合えることがあると信じたからです。2026年、志を同じくする敬愛してやまないメンバーと共に、この中津のまちと、この組織の未来のために、全力を尽くすことをお誓い申し上げます。
この機会を与えていただいた、これまでの全てに感謝をもって。

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